とうじ魔とうじによる超限定テーマの連載コラム
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その日も文殊のミーティングが武蔵小山のアトリエであった。雑談の途中、たまたま格闘技の話題になった。文殊のメンバー3人の中で格闘技が好きなのは僕だけで、松本、村田は全く興味なし。二人はどちらかと言うとサッカー派だ。逆に僕の方は世間話に野球やサッカーの話題がのぼっても、全くついていけない。そんなスポーツの好みが違う文殊の二人に、今日は珍しく格闘技のことで熱弁してしまった。桜庭和志についてだ。なんで、そんな話をしたのだろう?たぶん先日の「桜庭対ホイス・グレイシー戦」の1時間47分に及ぶ死闘の興奮が覚めやらなかったからだろう。たまたま話題の方向が格闘技の方に流れたとたん、堰を切ったように僕は饒舌になり、語った。グレイシー柔術とはなにか、グレイシーの不敗神話、そこに突然日本の桜庭和志という男が現われたこと、ホイラー戦、そして1時間47分のホイス戦、グレイシー・キラー桜庭とはどんな選手か、等々を興味のない二人に対して得々と。僕は興奮で鼻息も荒かったと思う。まあ、それぐらい僕のヒーローは桜庭だったってことで。
ミーティングも終わり僕はアトリエを出た。そして一人、武蔵小山のメイン商店街パルムから一本外れた人の少ない道を歩いていた。僕の目の前を歩いているウインドブレーカーの男。大きい。その大きな背中の男が歩きながらチラリと横を見る。すると男の横顔がチラリと覗く。一瞬、僕は目を疑い絶句した。「ま、まさか…」。男と僕の行く方向は偶然同じだったようで、僕が曲がろうとしている角を一足先に男が曲がった。今度はしっかりと顔が見えた。間違いなかった。桜庭和志だ。「なんで桜庭が、こんな所にいるの??」僕はたった今、文殊の二人に桜庭の話をしていた時の何倍もさらに興奮した。桜庭は大きかった。実は桜庭はプロレスラーの中ではあまり大きい方の選手ではない。だが、間近で見た桜庭の印象は大きかった。
桜庭と並んで歩くこと暫し。桜庭が消えた。突然、目の前から消えた。建物に入ったのだ。僕は立ち止まり、桜庭が入っていったビルを見る。そこには、こう書かれていた。「高田道場」。高田道場が武蔵小山に引っ越してきた直後の、ある日の出来事である。
ミーティングも終わり僕はアトリエを出た。そして一人、武蔵小山のメイン商店街パルムから一本外れた人の少ない道を歩いていた。僕の目の前を歩いているウインドブレーカーの男。大きい。その大きな背中の男が歩きながらチラリと横を見る。すると男の横顔がチラリと覗く。一瞬、僕は目を疑い絶句した。「ま、まさか…」。男と僕の行く方向は偶然同じだったようで、僕が曲がろうとしている角を一足先に男が曲がった。今度はしっかりと顔が見えた。間違いなかった。桜庭和志だ。「なんで桜庭が、こんな所にいるの??」僕はたった今、文殊の二人に桜庭の話をしていた時の何倍もさらに興奮した。桜庭は大きかった。実は桜庭はプロレスラーの中ではあまり大きい方の選手ではない。だが、間近で見た桜庭の印象は大きかった。
桜庭と並んで歩くこと暫し。桜庭が消えた。突然、目の前から消えた。建物に入ったのだ。僕は立ち止まり、桜庭が入っていったビルを見る。そこには、こう書かれていた。「高田道場」。高田道場が武蔵小山に引っ越してきた直後の、ある日の出来事である。
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